「しつこいよっ!いい加減にして!!」
突然教室中に響き渡る声。
「だからあそこに行っちゃいけないんだって!何回言ったら判るの!?」
それに負けんばかりの声。

「別に学校の何処に居たって私の勝手じゃん!
それに何でこんな所で姉妹喧嘩しなきゃいけない訳!?馬鹿馬鹿しい...」
「だから、昔からこの学校の伝説になってるから行っちゃいけないの!
もう愛も意地っ張りなんだから...体育館裏の水道の横に出たって何回も聞いた...」
「あぁもうそれがしつこいって言ってるの!大体姉ちゃんは...」
何時までも止まらない。下校時刻はもうとっくに過ぎていた。

「あらぁ〜、また愛ちゃんと喧嘩ですかぁ?美紗姉さん」
「悠美...」
「うぁっ...あ!こんにちわっ!」
そこにはいつの間に美紗の親友が居た。2人の仲裁役兼からかい役みたいな感じだ。
「でもね愛ちゃん。美紗の言ってる事は本当よ。実際私も見たんだから」
「えぇ!?本当ですか?」
流石に先輩の前では愛もあからさまに否定出来ない。
「その時は、陸部が終わって水道で足とか洗ってたんだけど、そしたら青白い手が...」
「うぅ...」
「冗談だよ!」
「はい!?」
「幽霊なんて居ないって!」
「ですよね!やっぱりいないんだって姉ちゃん!」

「違う!」

やけに空白の空いた後の言葉。そして、あまりにも低くすごんだ声。
「どうしたの...一体...」
その恐ろしさに、愛も思わず引いてしまった。
「あそこには居るの...絶対に!」美紗は続ける。
「ずっと前に...あそこで...私は動けなくなった...捕らえられたのよ!
もう殺されそうになったわ...『あんたがいるから私達は一緒になれない』って...」

その時、悠美の表情が一変した。
「言わないで!」
そして、そのまま悠美は教室を出て行ってしまった。

「...何なの?今の...」
「これは簡単には説明出来ない事なの...でも、その前に...このまま居たら...殺される!」

その日の夜。愛はあの時の美紗の言葉が気になって眠れなかった。
「何であのまま居たら殺されるなんて言ったのかな...どういう事なんだろう...?」
そう考えている間に何処かから妙な呻きが聞こえてきた。
その呻きは次第に声へと変わってきている事に愛は気が付いた。

『あ...もう...一緒...に...なれない...の?』
『そんな...事は...無い...この...は...必ず...』

「何、何なの今の声?」
突然大きな音が響いた。そこには黒い影...美紗だった。
「愛!大丈夫?」
「えっ?大丈夫って言われても何も無かったけど...声以外...」
「その声が問題なのよ!!きっと愛は狙われている...私のせいで...」
最初はただの美紗の被害妄想かと愛は思っていた。
しかし、美紗はあまりにも真剣だった。
「明日は部活が無いはず、だから終わったらすぐに私の所に来て!絶対よ!」
とにかく明日は美紗の所へ行ったほうが良いだろう。愛の感覚が確信した。

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