「それにしてもさ。何で恭介が通路挟んだ隣な訳?」
「知るかよ。名前順なんだし。ってか原嶋とかが勝手に決めたんじゃねえの?」
「まあ確かにそうだけど...そこまで離れてないはずなのにこれってどんだけ...」
「ああもう別にどうだって良いじゃん。それよりいきなり授業とか言って、有得ねえ」
「うん...補習だとか言ってたけど教科書要るし。」
奈緒は久し振りに背負ってきた黒い鞄の中から教科書とノートを取り出し、机の中に入れようとした。

「...あれ?」
「どうした?」
「これが入んない...何かあんのかな?」

奈緒が屈んで机の中を覗いて見ると、そこには...

「何か箱みたいなのがあるし」

「箱?でも終業式のとき机の中チェックされただろ?」
「だよね...何であるんだろ...」
そう言って、その箱を取り出してみた。

白い厚手の紙製の小さな箱だ。紅色のリボンが巻かれている。
奈緒はそのリボンを解き、箱を開けてみた。

中にあったもの。それは綺麗に透き通った紅色の水晶だった。
しかし、それは何処となく不思議なものでもあった。

水晶の中では幾何学模様の何かが躍っている。
それはとても神秘的で、奈緒の目を完全に奪っていた。

そして、その様子をさっきから気にしていたのか、後ろでは1人の少女が声をかけようとしていた。

「それって...紅水晶?」

「何?」奈緒は、その声で漸く我に返り、振り返った。
そこに居たのは、麻依。

「何か、そんな感じのものを前に本で見た事があるんだけど...」
「マジで?じゃあ、その本見せてくれる?」
「うん。あったらだけど...」
「恭介も行く?」
「あぁ...俺は、いい」
「あ、そう...じゃあ、後で麻依ん家行くね!」

補習という仮の名の授業は想像以上に長いものだった。
奈緒は水晶と麻依の言っていた事が気になってしょうがなかった。

午後になり全てが終わると、彼女は彩と共に麻依の家に向かった。
勿論あの水晶を手に。

「えっと...確かこの本。宝石の辞典みたいな感じの奴。」
「ってか、さすが麻依の家は本が多いよね...」
「それは良いから。とにかく見てみようよ。」
「そうだね。奈緒、私にもその水晶見せてよ。」
「あ、うん。これ、あたしも何か普通の水晶とは違うと思うんだけど...」

そして、その水晶について書かれているページを見ると、3人は口を揃えて

「...結界紅水晶?」

「結界って、あの何か漫画とかに出てくるあの結界?」
「...なのかな...?」
「どうなんだろうね...怪しい気もするけど...」
奈緒は水晶を手に取り、改めてよく見てみた。

「結界紅水晶かぁ...確かに名前は似合いそうだけど。」

透き通っていて、触れられそうな幾何学模様。
奈緒がそれに触れた瞬間だった。

眩し過ぎる紅色の光が放たれ、3人は目をつぶるしかなくなった。

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