その日の放課後、永井は未だ迷い続けていた。


思い切って占って貰いに行くべきか、それとも行かないでおくべきか。
もし占って貰ったら不吉な事を言われて死ぬかもしれない。
しかし、行かなければ須藤達に馬鹿にされてしまう。


さあ、どうしようか...彼はただ一人教室に残り考え続けていた。


「それにしても永井って本当に臆病だよなー!」
未だ明るい商店街の中で、須藤は大声で言った。


「だな。占って貰っただけで死ぬなんてあるわけないし」森田もそれに合わせた。
「ってかそんな話一体誰から聞いたんだ?ちょっと気になってたんだが...」
「まあちょっとな。それは秘密だ」須藤の問に、森田は軽くおどけてみせた。
「はぁ?秘密かよ!言ってくれたって良いじゃねえかよ...」
と、須藤がわざとらしくいじけると


「そんなに聞きたいか?なら教えてやる。ただし...」
「ただし?」


「実際に占って貰ったら、だ。」


それは最早須藤の予想通りの回答に過ぎなかった。
「何だ、それだけかよ...」あまりにも典型的で逆に肩透かしを食らったような気分だ。
「占って貰おうじゃねえか。俺は永井なんかよりずっと勇気ある男だからな。」
「だよな!」
森田の表情がいつもの様な明るいものになった。


「それでこそ男・須藤永吉だ!」
「おう!あったりまえよ!」
2人はいつの間に永井の事も忘れ盛り上がっていた。


「じゃあ早速その占い師が居る場所を教えてくれよ」
「あぁ。確かこっちの路地裏辺りだったような...
俺が案内するよ。実際占ってる所を見なくちゃ証拠にならないもんな」
「確かにな。そうと決まったら行くぞ!」


そして2人は意気揚々と路地裏へ向かっていった。
後の運命も知らずに...


「う〜ん、本当にどうしよう...」
その頃永井はまだ迷い続けていた。


「2人はどうしたんだろう...あの商店街で待ってるのかな?
だとしたら結局馬鹿にされるんだろうな...
占いなんて当たらないよね...うん、当たらないよ。2人に馬鹿にされ続けるよりマシだ。
行くしかないんだ...ここはひとつ勇気を出して行ってみよう!」


自分を納得させるようにして心を落ち着かせ、学校を出た。
彼らの居るであろう商店街へ向かうために...


「確かこの路地裏の奥に居るはずなんだけど...」
「誰も居ないし...」
薄暗い道を目の前に、須藤と森田は呆然と立っていた。


「本当に此処で合ってるのか?」
「あぁ。ってか此処以外に人が簡単に入れるような路地裏ってそんなに無いだろ...」
「確かにな。まあ、もしかしたら暗くて見えないだけかもしれないし、ちょっと奥まで行ってみようぜ」
「うん、そうだな」
そして2人は行ける範囲で奥へ進んでいった。


「居ないな...やっぱ違う所なんじゃないか?」
「そんな事無いはずだけどな...今日は休みとか?」
「俺に聞くなよ...」
結局見つからないので、戻ろうとしたその時


「ちょっとそこのお2人さん、お待ちなさい」


その声に2人は一斉に振り向いた。
そこに居たのは寂し怪しい雰囲気を醸し出す人だった。


紺色のクロスが敷かれた小さな机があり、その上には水晶だのカードだの様々なものが置かれていた。
明らかに見た感じが占い師だ。しかしどうも何か暗い感じがする。


「あ...もしかして、占い師の方ですか?」
当たり前のような事を須藤は聞いた。
「...見ての通りです」とその人は答えた。


(おい、多分あの人の事だぞ。占って貰えよ)森田が須藤に耳打ちをした。
そして、「あの、占って貰って良いですか?」と尋ねた。
「勿論です。後、お金は要りませんよ。」


(お金要らないんだ...)
そう思いつつ、「じゃあ、お願いします」と頼んだ。


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