その日、目覚めの時がやけに早く来た。
妙な気まぐれだ、と少し気にしつつもそのまま家を出ていつもの道を歩みだした。
いつもの踏切を通り、いつもの信号を渡り...そして、何一つ変わりない教室に着いた。

いつしか、時間は過ぎていった。
自分の時間が消えていく―――

何故か、今日は授業に身が入らない。全く別の事ばかりが思い浮かんでくる。
この授業に意味を感じなくなってきた。何でここに居るのだろう...?
そんな中、ふと空を見てみた。
いつも同じで、いつも違う。穏やかな風が、教室を包み込む。
翼の様に広がる雲。そして繋ぎ目の無い1枚の空。何だか光に吸い込まれてしまいそうな―――
ふたつが織りなすもの。変わりゆくもの。
まるで、あの時書いた詩をそっくり写し取った様だ。

あの日は、やけに気分が乗らなかった。少しだけ此処に居る事に無意味さをも感じていた。
あの時見た空。今彼方に在る空。
何時も同じで、何時も違った。

あの時見つけた雲。
純粋ささえ感じた白い雲。翼のように広がり、やがて散ってゆく。
跡に残るは、空。何時までも何時までも。

今此処から見える空。
微かに灰色にくすんだ空。全てを覆い尽くしていた。
そして空が姿を隠した。何処までも何処までも。

空は何時でも空色。あの時の空も、今の空も。
朝日が昇っても、夕日が沈んでも、夜になっても。
白くなっても、橙に染まっても、黒く広がっても。
何時でも空色。変わりゆく空色。
あの日の薄水色も、今日の灰色も、全て空色。

繋ぎ目の無い空。流れゆく雲。
彼らの織りなすもの。永遠なる神秘。
何時までも眺めていたい。この惑星が無くなるまで。
やがて、何時かは此処を離れる―――少しだけ、未来に思いを馳せてみた。

そういえば、昨日は誕生日。自分でも忘れかけていた。
友達から受け取ったもの。その小ささが心にしみる。 ものは何時か無くなる、だから大切にしよう―――
時には、友達は心も動かす大きな意味を持つ。そんな事も思いに浮かぶ今日だった。

何と無く、今日は1人で居る事が多かった。理由は...多分無い。
でも、それはただの「逃げ」―――本当は自分でも気付かない様な理由があるはず。
それを見つけよう。今日が終わるまでには。

帰りに見た空。あの時と同じで、違った。
黄金色になりそうでならない時。雲が、水玉の様に並んでいた。
やはり、すべてが変わりゆく。

光の様に、すべてを暖かく包み込みたい―――

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