何も見えない闇の中を、僕は彷徨う。
たった一人、冷たい孤独。
感覚も暖かさも希望の光も全て閉ざした。
今はもう何処にも抜ける事さえ出来ない...

あの日、僕は一体何をしていただろうか。
あの時、僕は一体何を見ていたのだろうか。
あの頃、僕は幸せだったのだろうか。
それは判らない。判った所でどうしようもない。
そもそも幸せなんてこの世界に必要なのだろうか。そんな事までも思い始めていた。
今はもう何も感じることが出来ない...

そして今、1つの記憶が蘇る。

沈みかけている夕陽。
長い道に揺られるバス。
他愛の無い会話。
見つめる景色。
降り立った場所は、いつもの駅前。
財布を取り出し、改札へ。
いつもと変わらない日常。

でも僕の心はそうじゃない。
こんな日常なんかに意味は無い。
早く抜け出したかった。
こんな孤独に悩む日常から。
偽りの友情しかない日常から。

今の僕は、縛られている。
もう1度、やり直したい。
人との間にある、超えられない「ライン」。
それを超えようとして、結局此処に行き着いた。

人の生きる道は、1つの「ライン」。
そこを辿っていきながら、人は生きていく。
でも、その「ライン」は変えられる。
人それぞれが自分の道を進もうとして新たな「ライン」を切り開く。

だったら僕だって自分の「ライン」を自分で作り上げる。
もう1度、やり直す為に。
例え今の「ライン」が途切れても構わない。
繋がれない孤独な「ライン」は断ち切ろう。

今、僕は1つの「ライン」を見つめている。
ブロックで出来た黄色い「ライン」。
その先には黒金の「ライン」が何処までも伸びている。
向こうからは機械仕掛の人を運ぶ「ライン」が、「ライン」の上に乗ってやってきた。

そして僕は、目の前の黄色い「ライン」を踏み切った。

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